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苧麻をひく

畑のお隣のIさんに苧麻(八重山では「ブー」という)のひき方を教えていただいた。
ブーは八重山上布の素材、昔はどこの家でも庭先にブーを植えていて、ブー績みはおばあの日課だったそう。
「よくばあちゃんが木陰でやっていましたよ」とIさん。
今でさえブーを績む人は少なくなったけど、草から繊維を採って糸をつくるということが今もこうして日常的にある。
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苧麻はイラクサ科の多年草、古くは「からむし」や「まお」と呼ばれ、海外ではRamie ラミー。
葉っぱの裏が白いので翻るとすぐわかる。
道路の横のちょっとした空き地みたいなところにも植わっていたり、意外とあちこちでみかける。

からむしから繊維をとって糸~布をつくることは縄文時代にさかのぼり、万葉集には苧麻をうたった歌

「 庭に立つ 麻手(あさで) 刈り干し 布 曝(さら)す
        東女(あづまおみな)を 忘れたまふな 」 
             巻4-521 常陸娘子

( 庭に生い立つ麻 それを刈り、干し、布に織って晒す私。
 この東女をどうぞ忘れないで下さいね ) 

(万葉集遊楽さんのサイトより抜粋)

があったり、日本書紀にも記されている。

古代、貴族が着ていたのは絹の衣で、、普通の人々が身につけていたのは麻布だったといわれている。
からむしを素材にした八重山上布や越後上布は、今や貴重でかなり高級な織物だけれど、そもそもは庶民の肌になじんだ布だったのだ。

多年草の苧麻、刈り取った株からまた新しい芽が吹き出し、40~50日で1.5mほどに伸びて収穫できる。
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収穫の目安は根元が黄色っぽくなったとき。刈り取る際に茎が折れると繊維に跡が残ってしまうので気をつける。
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手でしごいて葉を落とし
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ぽきんと折ったところから外皮をはぐ
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外皮は2つ割れになるようにして、細かく裂けないようにする。後の作業をするときの手間に大きく差が出る。
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Iさんはさすが慣れた手つき、指をはさんでキュー
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外皮をはいだら水につけて、次は甘皮をはぐ。
作業は刈り取った日に、遅くても翌日までにはすませないといけないので忙しい。
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金属のへらでしごくと甘皮がはがれる。今回はスプーンでもできたし、
スケッパー(パン生地カッター)を使っているところもあるみたい
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アクが出て茶色っぽくなった甘皮がはがれ、中のきれいな黄緑色の繊維(靱皮)だけにする
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これがIさんのいう「ムトブー(元ブー?)」、今もからむし織りがさかんな会津の昭和村では
「青苧(あおそ)」と呼んでいるもの。ひとまずこの状態にすれば、一段落。
「残りは家でやってね~」と言われて持ち帰り、これだけのムトブーをとるのに約2時間かかった(^^;)
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30分ほどゆがいて
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干す。初めのうちはこんなふうにグリーンが残っているけれど
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干しているうちに色が抜けてきて白っぽくなる
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美しい光沢も苧麻の特徴
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しかーし! ここからがますます根気のいるブー績みの作業。
繊維を爪で細く細く裂き、つなげて一本の糸にする。
Iさんの績んだ糸。「私なんかまだまだ下手ですよ」というけれど、とってもきれい~
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涼しくて、丈夫で、吸湿・発散性にすぐれた苧麻。
畑にちょっとだけ植えて、少しずつ糸をつくって行く予定。でもどんどん殖えるらしい…
by fromishigaki | 2010-08-27 11:52 | handmade

自然と暮らし、旅の記録


by fromishigaki
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